NEWS
更新情報
クマ取り
二重整形から眼瞼下垂手術まで―現代美容外科における目元形成術のすべて
本記事の内容は次の通りです。
- ・主な目元整形術の種類とその概要
- ・二重まぶた形成術(埋没法・切開法)の詳細と比較
- ・目頭切開・目尻切開術の術式と適応
- ・眼瞼下垂手術の解剖学的基礎と治療戦略
- ・下眼瞼形成術(たるみ取り・クマ治療)の現状
- ・症例に応じた術式選択の指針
- ・合併症とリスクマネジメント
- ・今後の展望と新たな技術
主な目元整形術の種類とその概要
目元の美容外科手術は、顔貌の若返りや印象形成において極めて重要な領域です。代表的な術式としては以下のものがあります。
- ・二重まぶた形成術(埋没法・切開法)
- ・目頭切開術
- ・目尻切開術
- ・眼瞼下垂手術
- ・下眼瞼形成術(下眼瞼脱脂術、皮膚切除術、脂肪注入術)
- ・涙袋形成術
これらの術式は、患者個々の解剖学的特徴や希望するデザインによって適応が異なります。次項以降、各術式について詳細に解説します。
二重まぶた形成術の詳細―埋没法と切開法の比較
二重まぶた形成術は、日本における美容外科手術の中でも最もポピュラーな術式の一つです。代表的な手法は「埋没法」と「切開法」です。
埋没法(非切開式二重形成術)
埋没法は、糸を用いて瞼板と皮膚を数カ所連結し、二重ラインを形成する方法です。局所麻酔下に実施し、手術時間は15〜30分程度。術後の腫脹は軽度で、社会復帰までのダウンタイムが短いのが特徴です。
- ・メリット:ダウンタイムが短い・傷跡が残らない・元に戻すことが可能
- ・デメリット:二重ラインの持続性に限界がある・眼瞼の厚みがある場合は外れやすい
適応:皮膚のたるみが少なく、まぶたが薄い若年層に特に有用です。
切開法(二重切開術)
切開法は、希望する二重ライン上を切開し、必要に応じて眼窩脂肪やROOF(retro-orbicularis oculi fat)を除去しながら確実な二重ラインを形成する手術です。皮膚のたるみや脂肪が多い場合でも対応可能で、半永久的な二重を実現できます。
- ・メリット:二重の持続性が高い・まぶたの脂肪や皮膚のたるみにも対応可能
- ・デメリット:術後の腫脹・内出血が強い・社会復帰までのダウンタイムが長い
適応:中高年や皮膚のたるみが強い症例、持続性を重視する症例に推奨されます。
目頭切開・目尻切開術の術式と適応
目頭切開は、蒙古ひだを切除または移動させることで目の横幅を広げ、目元を大きく見せる術式です。日本人の多くは蒙古ひだが発達しており、この術式によって目の印象を大きく変えることが可能です。
目頭切開術
代表的な術式はZ形成術、W形成術、内田法など。いずれも、皮膚切開線のデザインにより傷跡の目立ちにくさや切除量を調整します。
- ・メリット:平行型二重の実現、目の横幅拡大、鼻筋の強調効果
- ・デメリット:瘢痕形成のリスク、過剰切除による不自然さ
術前デザインが重要であり、切除量や切開位置の誤りは目頭変形や三白眼リスクを高めます。
目尻切開術
目尻切開は、外側の眼瞼裂を延長し、横方向に目を大きくする手術です。外側の眼瞼靭帯や筋膜の解剖を十分理解した上で、過剰な切開や外反を防ぐことが重要です。
- ・メリット:目の横幅拡大、優しい目元形成
- ・デメリット:元に戻りやすい、外反リスク、瘢痕形成
眼瞼下垂手術の解剖学的基礎と治療戦略
眼瞼下垂症は、挙筋腱膜の弛緩や筋力低下によって上眼瞼の開瞼力が低下する状態です。原因は先天性、加齢性、外傷性、神経疾患性など多岐にわたります。
術式の選択
腱膜性眼瞼下垂の場合、最も一般的なのは挙筋腱膜前転術です。皮膚切開を行い、挙筋腱膜を瞼板前面に再固定することで開瞼力を改善します。重度例や再発例では、前頭筋吊り上げ術(フロントアリススリング)が適応となる場合もあります。
- ・メリット:視野障害の改善、眠たげな目元の解消、若返り効果
- ・デメリット:左右差、過矯正・低矯正、ドライアイや眼球運動障害リスク
術前診断には、MRD1測定、眼瞼挙筋機能検査、Hessチャートによる眼球運動の評価が必須です。
下眼瞼形成術(たるみ取り・クマ治療)の現状
加齢や遺伝的要素によって、下眼瞼に脂肪突出や皮膚のたるみが生じると、いわゆる「クマ」や「たるみ」として認識されます。これに対する外科的治療は主に以下の通りです。
経結膜脱脂術
経結膜的に下眼瞼膨隆脂肪を除去する術式です。皮膚切開を伴わず、外見上の傷跡が残らないのが特徴です。若年層や皮膚のたるみが軽度な場合に適応されます。
下眼瞼除皺術(ハムラ法など)
皮膚切開を伴い、膨隆脂肪の再配置(ハムラ法)や余剰皮膚の切除を同時に行う術式です。中高年や皮膚弛緩の強い症例に有効です。
- ・メリット:クマ・たるみの根本治療、若返り効果
- ・デメリット:術後の腫脹、内出血、瘢痕リスク
症例に応じた術式選択の指針
目元整形術は、患者個々の解剖学的特徴(眼瞼皮膚厚、眼窩脂肪量、蒙古ひだの発達、開瞼力、下眼瞼の支持組織など)や希望する仕上がり(ナチュラル・平行型・末広型など)によって術式選択が大きく異なります。
- 1.やみくもに流行の術式を選択するのではなく、解剖学的評価と患者の希望をすり合わせることが重要
- 2.二重形成術では、まぶたの厚みや皮膚のたるみを総合的に判断して埋没法・切開法を選択
- 3.目頭切開や目尻切開は、蒙古ひだの発達や目の横幅に応じて術式や切開量を微調整
- 4.眼瞼下垂では、原因と重症度に応じて挙筋腱膜前転術や前頭筋吊り上げ術を選択
- 5.下眼瞼形成術では、皮膚の余剰や脂肪の突出度に応じて経結膜脱脂術・皮膚切除術・脂肪再配置術を組み合わせる
合併症とリスクマネジメント
目元整形術における合併症には、以下のようなものが考えられます。
- ・出血、血腫形成
- ・感染
- ・左右差(非対称性)
- ・過矯正・低矯正
- ・瘢痕形成(肥厚性瘢痕・ケロイド)
- ・外反、眼瞼下垂の再発
- ・一過性または永続性の視機能障害(稀)
これらのリスクを最小限に抑えるためには、術前評価の徹底、正確なデザイン、解剖学的知識に基づいた丁寧な手術操作、そして術後フォローアップが不可欠です。
今後の展望と新たな技術
近年、目元整形術には再生医療技術や低侵襲手術器具の導入が進みつつあります。たとえば、PRP(多血小板血漿)や脂肪幹細胞を用いた再生治療、超音波メスや新規レーザー機器による皮膚切開、微小縫合糸による新しい埋没法などが開発されています。
また、手術前後のシミュレーション技術やAIによるデザイン補助も進化し、より個々の患者に最適化した治療計画策定が可能となっています。
まとめ
目元整形術は、単純な美容目的に留まらず、視機能や生活の質にも深く関わる高度な外科治療です。各術式の適応や限界を正しく理解し、患者個々の解剖学的特徴と希望に即したオーダーメイドの治療戦略が求められます。美容外科医として、常に最新の知識と技術をアップデートしつつ、患者との信頼関係の下で最善の治療を提供することが重要です。