豊胸

豊胸手術のすべて：カウンセリングから術式選択、リスク対策まで専門医が徹底解説

理想的なバストを叶えるための豊胸手術徹底ガイド

美しいバストラインを手に入れることを希望する患者さまが増加する中、豊胸手術は美容外科領域で非常に高い人気を誇る施術となりました。本記事では、カウンセリングの重要事項から最新の術式、合併症リスク、術後のフォローアップまで、専門医の立場から詳しく解説します。術前の不安を解消し、満足度の高い手術を受けていただくための知識を網羅しています。

目次

• ・豊胸手術の基本概念と目的
• ・カウンセリングで確認すべき重要事項
• ・豊胸手術の主な術式と選択基準
• ・インプラント挿入術の詳細
• ・脂肪注入豊胸の現状と注意点
• ・術前・術後の注意事項
• ・合併症・リスクマネジメント
• ・バストデザインの考え方
• ・アフターケアと長期フォローアップ
• ・よくある質問と症例紹介

豊胸手術の基本概念と目的

豊胸手術（Breast Augmentation）は、乳房のボリュームアップや形状の改善、左右差の調整など、美的・機能的な観点からバストを理想的な形に近づけることを目的とした外科的手法です。現代の豊胸術は、単なる大きさの追求だけでなく、患者さま個々の骨格や筋肉、皮膚の厚み、乳腺組織の状態を考慮し、自然な仕上がりと安全性を両立させることが求められています。

豊胸の主な適応は以下の通りです。

• ・乳房のボリューム不足（先天的・発育不全・産後萎縮など）
• ・左右差の改善
• ・形状や谷間の形成
• ・乳がん術後の乳房再建（リコンストラクション）

従来はシリコンバッグ（インプラント）を用いた手術が主流でしたが、近年は脂肪注入による豊胸も一般的になりつつあります。患者さまのご希望や体質、既往歴などによって最適な術式を選択することが重要です。

カウンセリングで確認すべき重要事項

豊胸手術の成功と満足度は、施術前のカウンセリングでどれだけ詳細に情報を共有し合えるかにかかっています。以下に、専門医として必ず確認している主な事項を挙げます。

希望する仕上がりとデザインについて

患者さまの理想とするバストの大きさ・形・質感・位置（谷間や乳頭の方向など）を具体的にヒアリングします。単に「大きくしたい」「自然に」という漠然とした希望ではなく、写真やモデルの画像などを用いてイメージの共有を図ります。特に下記のポイントは詳細に確認します。

• ・希望するカップサイズ（但し、カップサイズはメーカーや採寸方法で差異があるため、実際のバスト寸法や立体感での確認が重要）
• ・形状：丸み・高さ・乳房下縁のライン・乳頭位置
• ・質感：触感や動きの自然さ
• ・左右差や乳房の元々の非対称性について

全身状態・既往歴・乳腺疾患の有無

安全な手術のためには、既往歴や現在の健康状態の確認が不可欠です。特に以下の点に注意します。

• ・過去の手術歴、特に胸部手術や乳腺疾患（乳がん・良性腫瘍など）
• ・出産、授乳歴、今後の妊娠希望
• ・アレルギー、自己免疫疾患、抗凝固療法の有無
• ・喫煙・アルコール・薬物使用歴
• ・定期的な乳がん検診の受診歴

乳腺疾患が疑われる場合や、高リスク群では術前に乳腺外科との連携や画像検査（マンモグラフィー・超音波・MRI等）が必要です。

術前の注意事項とリスク説明

術前には、手術に伴うリスクやダウンタイム、合併症の可能性について十分な説明と理解が必要です。主なリスクとしては以下が挙げられます：

• ・出血、感染、血腫形成
• ・被膜拘縮（カプセル形成）
• ・インプラントの破損や変形
• ・感覚異常（乳頭・乳輪周囲のしびれや感度低下）
• ・左右差やデザイン上の不満足
• ・術後の乳腺検査への影響（特にインプラント挿入時）

また、術前1〜2週間程度は禁煙や特定の内服薬中止、サプリメント制限なども指導します。

豊胸手術の主な術式と選択基準

豊胸術の基本は「インプラント（人工乳房）挿入法」と「自己脂肪注入法」に大別されます。それぞれの特徴と適応、メリット・デメリットを解説します。

インプラント挿入法

シリコンや生理食塩水バッグを乳房組織内または筋肉下に挿入し、バストのボリュームアップを図る方法です。以下のような種類・挿入部位があります。

• ・バッグの種類：コヒーシブシリコンジェルバッグ、生理食塩水バッグ、テクスチャード・スムース等
• ・挿入部位：乳腺下法、大胸筋下法、大胸筋膜下法、デュアルプレーン法
• ・切開部位：乳房下縁切開、乳輪周囲切開、腋窩切開

特に近年は「コヒーシブシリコンジェル（高粘度シリコン）」が主流となっており、自然な触感と形状保持力を両立しています。挿入部位の選択は、患者さまの体型や乳腺の厚み、筋肉量、希望する仕上がりによって異なります。

自己脂肪注入法

患者さま自身の脂肪を腹部・大腿などから吸引し、特殊な処理の後、乳房へ注入する方法です。注入方法には「ピュアグラフト法」「コンデンスリッチ法」「セリューション法」などがあります。

• ・自己組織のため異物反応が少ない
• ・自然な見た目と触感
• ・同時に脂肪吸引による痩身効果も期待できる
• ・一度に注入できる脂肪量や生着率に限界がある
• ・脂肪壊死や石灰化、しこりのリスク

痩せ型の方や大幅なサイズアップを望む場合は適応とならないことがあります。また、脂肪の定着率は術者の技術による差が大きく、数回の分割注入が必要となるケースもあります。

インプラント挿入術の詳細

インプラント挿入による豊胸術は、術前デザイン、麻酔、切開、ポケット作成、インプラント挿入、縫合、ドレーン管理など多くのステップで構成されます。各工程ごとに専門的観点から詳細を解説します。

術前デザイン

仰臥位・立位双方でバストの自然な落ち方や乳頭の位置を確認し、挿入予定のインプラントサイズ・形状を決定します。皮膚の弾力性、乳腺の厚み、胸郭の幅や前後径、大胸筋の付着位置なども精査します。

麻酔・切開

全身麻酔または静脈麻酔＋局所麻酔を併用し、疼痛と出血リスクを最低限に抑えます。切開部位は患者さまの希望と術式に応じて選択しますが、術後の瘢痕目立ちにくさ、美容的観点から乳房下縁や腋窩切開が多用されます。

ポケット作成とインプラント挿入

乳腺下・大胸筋下・大胸筋膜下など、選択した層にポケットを作成し、止血を徹底しながらインプラントを挿入します。左右差の微調整や乳頭位置の対称性確保もここで重要です。適切なポケット作成が術後の自然な形態・被膜拘縮予防に直結します。

縫合・ドレーン管理

多層にわたり丁寧に縫合し、必要に応じてドレーン（排液管）を挿入します。術後の感染や血腫予防のため、清潔操作と術後管理が重要です。

脂肪注入豊胸の現状と注意点

自己脂肪注入豊胸は、近年急速に進化を遂げています。生着率向上、脂肪処理技術の進歩により、より自然で安全な豊胸が可能となっています。主な流れは以下の通りです。

1. 1.や2.のように脂肪採取部位（腹部・大腿・臀部等）から脂肪吸引
2. 2.や3.のように吸引脂肪の遠心分離・洗浄などによる不純物除去
3. 3.や4.のように乳房への多層・多点注入（皮下・乳腺下・筋膜下など）

この際、脂肪の「生着率」（注入した脂肪が血流を得て定着する割合）は30〜70％程度とされます。過剰注入は脂肪壊死・石灰化・しこり形成のリスクを高めるため、適切な注入量と分割注入（2回以上）が推奨されます。

また、脂肪注入による豊胸は乳腺組織内にしこりや石灰化を生じることがあり、術後の乳がん検診時に良悪性の鑑別が難しくなる場合があります。定期的な画像検査や乳腺専門医との連携が重要です。

術前・術後の注意事項

豊胸手術を安全かつ確実に成功させるには、術前・術後の自己管理が不可欠です。専門医としての立場から、以下の注意点を強調します。

術前の注意点

• ・術前2週間は禁煙：血流障害による創傷治癒遅延や感染リスク増加を防ぐため
• ・ビタミンE、EPA、抗凝固薬、サプリメントなどの中止：出血傾向を避けるため
• ・術前の入浴・清潔保持：感染予防
• ・術直前の飲食制限（全身麻酔の場合）
• ・術前検査（血液検査、心電図、胸部レントゲン、画像検査など）

術後の注意点

• ・術後1週間は安静と創部の清潔保持
• ・術後の圧迫固定：ズレや血腫予防、皮膚の伸展コントロール
• ・重労働・運動・入浴の制限（2〜4週間）
• ・術後の抗生剤・鎮痛剤の内服
• ・定期的なフォローアップと画像検査

術後のトラブル（熱感、著明な腫脹、強い痛み、皮膚の変色など）がある場合は、自己判断せず早期に受診してください。

合併症・リスクマネジメント

豊胸術には局所的・全身的な合併症リスクが存在します。リスクを最小限に抑えること、万が一発生した際の迅速な対応が専門医の使命です。

主な合併症とその対応

• ・血腫：術後24時間以内の発症が多く、迅速なドレナージや再手術が必要になることも
• ・感染：局所洗浄・抗菌薬投与、重症例ではインプラント抜去が必要
• ・被膜拘縮：マッサージ、薬物療法、重症例はインプラント入れ替えや被膜切除
• ・感覚異常：多くは一時的だが、稀に長期残存することも
• ・左右差・位置異常：術後の腫脹が落ち着いてから修正術を検討
• ・脂肪壊死・石灰化：経過観察や、しこりの切除が必要な場合も

インプラント挿入例では、稀にアナフィラキシーや深部静脈血栓症、肺塞栓症などの重篤な合併症が報告されていますので、術前リスク評価と術中・術後管理が必須です。

バストデザインの考え方

バストデザインは、単に大きさを追求するだけではなく、以下の観点から総合的に計画します。

• ・骨格：胸郭の幅、前後径、肋骨の形状
• ・乳腺・皮下脂肪の厚み
• ・乳頭・乳輪の位置
• ・既存バストの左右差・高さ・形状
• ・皮膚の伸展性・弾力性
• ・年齢や今後の妊娠・授乳計画

患者さまとのイメージ共有には、3Dシミュレーションや術前の写真・模型を活用します。インプラントのサイズ・形状（ラウンド型・アナトミカル型など）や挿入位置、脂肪注入量の調整も全体のバランスを見て決定します。

アフターケアと長期フォローアップ

豊胸術後は、短期的な術後管理だけでなく、長期の経過観察も重要です。特にインプラント挿入例では、10年を目安に入れ替えや検診が推奨される場合もあります。

• ・術後1週間：創部・全身状態チェック
• ・術後1ヶ月：左右差、インプラント位置、拘縮・感染所見の確認
• ・術後半年・1年：乳腺全体の状態、しこり・石灰化の有無
• ・年1回の乳腺検診（マンモグラフィー・超音波・MRI）

自己脂肪注入例では、術後の脂肪壊死や石灰化を定期的にチェックします。乳がん検診時には、豊胸術歴を必ず伝えることも忘れずに。

よくある質問と症例紹介

Q1. 豊胸インプラントの破損リスクは？

現行のコヒーシブシリコンジェルは耐久性・安全性ともに極めて高く、日常生活での破損リスクはごく稀です。ただし、数十年単位での経年劣化や強い外力での損傷は完全に否定できません。10年を目安に定期検診を受け、必要に応じて交換を検討しましょう。

Q2. 授乳に影響は？

乳腺下・大胸筋下いずれのインプラント挿入でも、原則として授乳機能に大きな悪影響はありません。但し、乳輪周囲切開では乳管への影響が出る場合もあるため、妊娠・出産予定がある場合は術式選択に十分な配慮が必要です。

Q3. 脂肪注入の生着率を上げるコツは？

脂肪の生着率は、採取・処理・注入技術に大きく依存します。低圧・低吸引による脂肪採取、遠心分離や洗浄による不純物除去、極細カニューレによる多層・多点注入がポイントです。また、分割注入や術後の禁煙・十分な休養も重要です。

症例紹介

30代女性、痩せ型体型。大胸筋下インプラント（220ccアナトミカル型）挿入。術後6ヶ月、自然なバストラインと左右対称性を維持し、被膜拘縮・合併症なく経過良好。
40代女性、腹部脂肪注入法（ピュアグラフト使用）。2回に分割注入。術後1年で生着率約60%、しこり・石灰化なし。マンモグラフィー上も異常所見なし。

まとめ：豊胸手術で理想のバストを実現するために

豊胸手術は、適切なカウンセリング・術式選択・術後管理によって高い満足度と安全性が得られる外科的施術です。患者さま一人ひとりの体型や希望に合わせたオーダーメイドの治療計画が、自然で美しいバストへの第一歩となります。専門医との充分な相談のもと、納得と安心の豊胸手術を受けてください。